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日本の介護とその問題。現状と未来を探る。

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日本の介護とその現状

 現在、日本における介護は非常に厳しい状況に置かれている。高齢者の数が増加の一途をたどる中、出生率の落ち込みにより若者の数は少ないままだからだ。少子高齢化問題である。今後も高齢化の流れは衰えず、2030年には65歳以上の高齢者の人口比率は31%にものぼるというのだから驚きが隠せない。社会保障費は年々大きく膨らみ、若者たちがその負担を迫られている。制度の面からも、人材の面からも、今の日本は明らかに危うい状態にあるということは言うまでもないだろう。完全に需給のバランスが崩壊してしまっているのだ。

制度的問題

 そうした中で、制度面での問題としては年金や医療、介護などがあげられる。年金制度は日本に住んでいる人がみんなで助け合う制度である。働ける人が保険料を納め、働けない人へと分配されるのだ。しかし、年金受給者の増加と労働人口の減少は、財源の確保に暗い影を落とし制度の存続には不安が残る。また、医療や介護にしても同様の問題を抱え、受給基準の不透明感、高齢者側の負担の大きさなども問題となっている。未だ嘗て経験したことのない超高齢化社会に突入しようとしている日本。社会の変化に沿った柔軟な制度改革をしていく必要があるだろう。

人材的問題

 一方の人材面での問題には、医療従事者、介護施設の不足などがあげられる。高齢者の増加に比例して、医療・介護の需要も増大しているからだ。平均寿命の上昇もまた、それの一因になっていると考えられる。多くの医師が都市部に集中し、地域は慢性的な医師不足に陥っているのが現状だ。地域医療は存続の危機に立たされている。地域の過疎化は進み、費用対効果の面でも、容易に医師を確保できない。病床数の不足も深刻だ。また介護の面でも、高齢者を受け入れる施設や、介護をする者が足りていない事実がある。さらには高齢者が都市部に集中しているため、都市部での需要過多に拍車がかかっている。深刻な人材不足、受け入れ先不足というわけだ。

民間企業の動向

 ここに目をつけたのが民間企業だ。特別養護老人ホームが不足する中、民間企業の営利目的での介護事業への参入が増えてきている。しかし、要介護の優先順が高い人から入居が可能な、利用料の安い特別養護老人ホームとは異なり、民間の施設は値段が高い。少ない年金だけでは利用料を払うことができないのだ。高齢者は金のなる木である。結局は持てる者だけが介護を受けることができ、持たざる者は苦しい生活を強いられるしかない。また、急速な事業展開によってサービスの質の低下も否めない。デイサービスや施設において自由サービスなどによって余計な費用まで取られることもある。これでは、ぼったくり商売と言われても仕方がない。

苦しい現実

 現在、単身世帯で年金受給額が年100万円に満たない人の割合は40%以上にもなる。生活保護を受け、デイサービスやショートステイを繰り返し、施設をたらい回しにされる高齢者たち。行き場をなくした彼らは、本来なら高齢者の受け入れとはなんの関係もないNPO運営の無料低額宿泊所などにも駆け込む事態にまでなっている。それに、現在国が急ピッチで増やしているサービス付き高齢者住宅も、認知症や体調が悪化すれ退居しなければならない。本当に高齢者が安心して暮らせる場所はあるのだろうか。知らない環境を転々とするストレスは、計り知れない。また職員の虐待や介護疲れによる離職なども問題として浮かび上がっている。これでは身体的なケアだけでなく、心のケアまで必要となってしまっているだろう。

現状を打開するには

 今後も日本の高齢化の流れは変わらない。私たちはこの問題をどのように受け止め、どうしていけばいいのだろうか。早急な対応が迫られている。

 これらの問題を解決しようと考えたときに頭に浮かぶのが「家族」という言葉だ。高齢者の中でも特に単身世帯の状況の悲惨さがよく目につくからだ。だれに頼ることもできず、心細い中、少ない年金と生活保護をうけて施設を転々とする彼らはもはや、不謹慎だが「生ける人形」とでも表現できるのではないだろうか。人間としての尊厳を持ち、文化的で必要最低限の生活さえできているのかさえ怪しい。もしそんな彼らに家族がいれば、励ましの言葉も、それなりに面倒を見てもらうことも、当然あっただろう。こんなはずではなかった、生きていてなんの意味があるのか、子どもがいれば、そう嘆く高齢者も多いのではないだろうか。だとすれば、子育て支援に力を入れ、子どもを作りやすい環境を整えるべきである。

 また、問題の根本にあるのは労働人口の不足だ。現状では少ない労働人口で金銭的にも、労働的にも増大する需要を賄っていかなければならない。労働人口をもっと増やし、需給のバランスを整えることで一人当たりにかかる負担を分散させ、高齢者も手厚い介護が受けられるようにする必要があるのだ。であるならば、やはり子育て支援(少子化対策)に力を入れるべきであろう。

市民意識の変化の必要性

 高齢者人口の増加によって、忙しく働く現役世代が政治で意見を通すことは難しくなっている。先の大阪都構想における住民投票の結果を見ても、高齢者層の票の影響が大きいことがよく分かる。しかし、高齢者志向の政策ばかりをやっている場合ではない。未来を見据え、つぎに国を支える子どもたちを育てる政治を行わなければ、これらの問題は根本的には解決しないのだ。核家族化が進んで、昔に比べて子育て負担が大きくなり、地域での助け合いも少なくなっている現代。家庭に子育て給付金を支給するだけでなく、会社や地域ぐるみでお互いを助け合う仕組みをつくることや、幼稚園・保育園の充実などで、子どもを産みやすい社会にしていくことが必要だろう。高齢者が安心し、楽しく暮らせる社会、それを実現させるためにも未来への投資は欠かせない

新しい取り組み

 最近では、高齢者施設と幼稚園を併設した幼老複合施設なるものが出てきているという。ここでは暇を持て余し、一人寂しくやることも生きる楽しみもないが、多くの経験から様々なことを知っている高齢者と、これから様々なことを学び、遊び、日本を担っていく好奇心旺盛な子どもたちが同じ空間で過ごす。子どもたちは人生の大先輩から様々なことを学び、高齢者は子どもたちとの触れ合いで元気をもらう。そんな高齢者と子ども、過去と未来の融合。これは、理想の在り方ではないだろうか。

 高齢者が必要とされ、安心し、楽しく暮らせる社会。私たちの今後の選択にかかっている。

 

《参考文献・資料》

NHKスペシャル 『老人漂流社会“終の住処はどこに”』 2013年放送

NHKスペシャル 『老人漂流社会 “老後破産”の現実』 2014年放送

総務省統計局HP http://www.stat.go.jp/data/topics/topi721.htm

介護のほんねニュース http://news.kaigonohonne.com/article/70